製造業の派遣が禁止されている業務はある?注意すべきポイントも紹介
労働者派遣法によって、建設業務や医療関係業務など一部の業種で派遣が禁止されています。これらの業務では、専門的な技能や安全性が重視されるため、派遣労働者の資格や環境への適合がとくに重要です。そこで本記事では、派遣が禁止されている業務と、製造業において派遣が禁止されている業務はあるのかどうかについて解説します。
派遣が禁止されている業務とは
まずは、派遣が禁止されている業務とその理由についてみていきましょう。
労働者派遣法によって、いくつかの業務では派遣が禁止されています。具体的には、港湾運送業務、建設業務、警備業務、医療関係業務です。以下で、それぞれくわしく解説します。
港湾運送業務
まず、港湾運送業務においては、労働者の安全とセキュリティが重要視されています。
港湾では荷役作業や船舶の入出港など、危険な状況が常に存在しています。そのため、経験豊富な労働者が必要であり、技能や経験が不十分な場合、安全性が損なわれるおそれがあるため、派遣は禁止とされています。
建設業務
建設業務においても、港湾運送業務と同様の理由で派遣が禁止されています。
建設現場では、常に高い技能と安全への意識が求められています。建設作業は危険がともなう場面が多く、間違った手順や判断が大きな事故につながる可能性があるのです。そのため、経験豊富な労働者が必要とされ、作業の品質や安全性が損なわれる恐れがある派遣は禁止されています。
警備業務
警備業務も、派遣が禁止されている業務のひとつです。
警備員は、施設や人の安全を守る責任があります。緊急事態に迅速に対応し、適切な判断をするスキルが必要です。業務内容や現場の特性を把握していない場合、適切な対応ができず、セキュリティが脆弱になる可能性があるため、派遣は禁止とされています。
医療関係業務
医療関係業務も派遣が禁止されています。
医療現場では患者の安全が最優先です。医師や看護師などの医療従事者は、高度な専門知識と技術が求められます。また、患者情報の取り扱いや倫理規定にも厳密な制約がある場合もあります。これらの要件を満たしていない場合、医療サービスの質や安全性が損なわれるおそれがあるので、派遣は禁止とされています。
製造業派遣が禁止されている業務
製造業派遣においては、資格が必要な業務を除き、一般的には制限されていません。
ただし、製造業での派遣労働においても、一定の規制が存在します。
業務範囲外の仕事は禁止
派遣法においては、業務範囲外の仕事を禁止しています。
製造業においても同様で、派遣労働者が契約に含まれていない業務を行うことは禁止されています。具体的には、契約外の時間外労働や休日出勤が含まれます。
もし、法定労働時間外での残業や休日出勤が発生する場合、人材派遣会社である派遣元は、労働基準法第36条に基づく36協定(さぶろくきょうてい)を締結し、届出を行う必要があります。36協定は、労使間で時間外労働や休日出勤に関する協定を行うものであり、その締結と届出は派遣元の責務です。
そのため、派遣元との契約内容を事前に確認しておきましょう。
日雇い派遣は禁止
2012年に施行された労働者派遣法改正により、日雇い派遣が原則禁止されています。
この改正は、派遣元と派遣先の両方が雇用管理責任を負わないことから、労働災害が発生するリスクを考慮したものです。派遣労働環境の安全性を確保するため、派遣元との雇用契約は最低でも31日以上と定められています。
条件を満たしていない部署移動は禁止
派遣の部署移動は原則として禁止されています。
契約書に記載のない部署や営業所での労働は、契約違反です。ただし、一定の条件を満たせば部署移動が可能となる場合もあります。一定の条件とは、派遣と派遣先の双方が合意していること、そして契約期間が満了していることの2つです。
製造業派遣が注意すべきポイント
製造業における派遣労働には、注意すべきポイントがあります。
以下で主なポイントを3つ紹介しますので、押さえておいてください。
業務内容が契約内容と合致しているか
まず、契約内容で定めた業務範囲であるかどうか確認することが重要となります。
派遣とは、派遣元と契約を結び、特定の業務を遂行するために派遣されるものです。そのため、派遣は契約で定められた業務範囲内でのみ働くことが求められます。業務範囲外での労働は契約違反となり、法的なトラブルの原因となる可能性があるので注意しましょう。
派遣先と派遣元の関係について
派遣先と派遣元の関係も大切です。
派遣元は、派遣社員の雇用主であり、派遣先は業務を行う場所や企業のことを指します。派遣社員は、派遣先で実際の業務をおこないますが、派遣元との関係も大切です。また、派遣元は派遣社員の労働条件や安全を確保する責任があります。
そのため、派遣先、派遣元どちらともコミュニケーションを密にし、労働条件や問題点を共有することが重要です。
派遣元との情報共有を忘れずに
派遣元とのこまめな情報共有が必要です。
派遣社員は派遣元に所属していますが、実際の作業は派遣先で行います。そのため、派遣先で何かトラブルや疑問があった際には、すぐに派遣元に相談しましょう。業務の進捗状況や問題点、派遣社員の安全や健康に関する情報を定期的に共有し、適切な対応を取ることが必要です。
まとめ
今回は、派遣が禁止されている業務とその理由、製造業派遣において禁止されている業務に焦点をあてました。製造業派遣に限ったことではありませんが、注意すべきポイントは派遣法の規定を遵守し、契約内容を遵守することです。また、派遣元、派遣先とのコミュニケーションを密にし、労働環境の安全性確保が重要になります。後々トラブルにならぬよう、あらかじめ契約内容をしっかりと確認し、何かあればすぐに派遣元に相談するようにしましょう。